2009年2月18日水曜日

食在遠近 * バックナンバー スープぴりっと、食感ふわっと 鶏湯糊鍋(中国)

 約6千キロに及ぶ万里の長城が尽きる西の果て。甘粛省の酒泉は、砂漠に囲まれた小さな街だ。
 5年前、郊外にある発射基地で中国初の有人宇宙船が打ち上げられて名をはせた。9月に宇宙遊泳に成功した神舟7号も、ここから宇宙へ飛んだ。
 酒泉に昔から伝わる朝食の定番が「糊鍋」。街の中心部にある「宋記糊鍋」は、早朝から行列ができる人気店だ。
 小麦粉をこねて油で揚げた中国式ドーナツ(麻花)を小さく砕き、とろみのある鶏がらスープを入れた鍋で軽く煮る。つるつるした食感の板春雨(粉皮)、揚げふも混ぜて変化を加える。
 「子どもの頃から食べて育った。大好きなので店を開いたんだ」。店長の宋成斌さん(45)は、忙しそうに小麦粉をこねながら笑った。
 メニューは、「大」と「小」の2種類のみ。大でも3.5元(約56円)と、安くてボリュームたっぷりだ。仕入れる小麦粉は毎日70キロ、夕方までに500杯も売れる。
 口に入れると、ふんわりした麻花にスパイスの利いたスープがからみ食が進む。油で揚げてあるのにくどくなく、あっという間に1杯平らげた。食べ終わると体中がポカポカと汗ばんできた。人気の秘密は、厳しい冬を乗り切る生活の知恵にあるようだ。(小林哲)

 【作り方】麻花は、小麦粉と水、卵、塩を練った生地を棒状に引き伸ばし、半分に折ってしめ縄のように寄り合わせて揚げる。鶏がらスープは、しょうがとコショウをよく利かせ、片栗粉でとろみをつける。地元の人は自宅でも作り、家庭ごとに味が異なるという。
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